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永江雅俊『原発が「死んだ」日』 ……「原発は「反いのち」」。 [本の感想系]

永江雅俊
原発が「死んだ」日
チェルノブイリ被爆児〈ベラルーシ〉
89人の里親となった僧侶の20年
阿吽社
2015年8月10日
2500円+税

原発が「死んだ」日.jpg

 1986年に旧ソ連のウクライナにあったチェルノブイリ原子力発電所で当時としては世界最大・最悪の原子力事故が起こった。情報は数日間あらゆる方面に対し秘匿されたが、放射性物質はその数日のうちに無防備な旧ソ連各地やヨーロッパを始め世界中に拡散された。特に被害が大きかったのがウクライナの隣のベラルーシであった。福島の時もそうだが、距離より風向きが被害の大小を決する。

 北海道の浄土真宗本願寺派(お西)の寺院の住職である著者は、北海道の泊村に当時建設中であった原発の稼働を阻止するためのさまざまな活動をおこなう。ハンガーストライキもする。結局泊原発は稼働するが、その後も、被曝したベラルーシの子どもを1ヵ月間あずかる里親になる活動を続けていく。その20年の記録である。

 著者の講演を聞いたことがあるので「ああ、あの話だ……」と思って準備が出来たので回数が減った自覚もあるのに、それでも、譬喩ではなく本当に2度も3度も涙が出る。淡々と語る著者の語り口がそのまま本になっていて、それがまた読み込みを深くする。こんなわたしの口からお念仏も自ずと出てくださる。

 著者の暖かさや気づきの深さ・広さ。「私は僧侶ではないなぁ」というつぶやき。著者を支える周囲の方々のさまざまなつながり。ベラルーシの子どもたちや大人たちの豊かさ。原子力行政のおかしさ。読んでいる自分の不甲斐なさ。

 311の後で、かつて里親として迎えたベラルーシの「子ども」から電話がかかってくる。「ナガエさんだいじょうぶ? フクシマだいじょうぶ? ニッポンだいじょうぶ?」それに対し大丈夫と答え、著者は自分が「遠いから大丈夫」と答えようとしたことに驚く。

 「よそ事なんだ。ひと事なんだ。遠いって、大丈夫って、いったい何なんだ!」

 さまざまに揺さぶられ、泣いたり、怒ったりしながら、読了した。

 「無量寿」を時間軸だけでなくヨコのつながりにも広げる著者独特の味わいが心に染みる。


原発が「死んだ」日―チェルノブイリ被曝児“ベラルーシ”89人の里親となった僧侶の20年

原発が「死んだ」日―チェルノブイリ被曝児“ベラルーシ”89人の里親となった僧侶の20年

  • 作者: 永江 雅俊
  • 出版社/メーカー: 阿吽社
  • 発売日: 2015/08
  • メディア: 単行本



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