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ピカチュウの目覚まし時計 [本の感想系]

子どもが小学一年生になりました。
妻のお姉さんが『小学一年生』の4月号を送ってくださいました。
付録はピカチュウの目覚まし時計でした。
そんなでっかいもんどうやって雑誌の付録に入れるんだろう?と思ったら、どうやらバラバラ事件の状態で届いて、妻と子どもがにこにこ組み立てていたようです。子どもは毎朝それで起きています。

https://sho.jp/sho1/72146

小学一年生 2023年 4月号 [雑誌]

小学一年生 2023年 4月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2023/02/25
  • メディア: 雑誌
  • (今は定価の3倍くらいの価格)

それは良いんですが、どうやら目覚まし時計は「ぴーか!」とか「ぴかぴか」とか「ピカチュウ!」とか喋ってるらしいのに、わたしには「くーか」「くかくか」「くっかくー!」としか聞こえません。たまに「ぴかぴか」みたく聞こえることもありますがほとんど「くかくか」「くっかくー!」です。

子どもが毎朝にこにこ起きてるので、自分だけ「くかくか」と聞こえてることに気付きました。妻にも「ピッカチュー!」って聞こえてるそうです。最初は「雑誌の付録だからかな」なんて舐めたことを思っていましたが、今は自分の耳の老化を目の当たり……耳の当たり?……にして、さみしいのです。

明日も
「くーか くかくか くっかくー!」で目が覚めることでしょう。
(ぴーか ぴかぴか ぴっかちゅー!)

しくしく。
なんまんだぶ。

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ハッピーバースデー [本の感想系]

マンガの紹介を某所(とかちののさまチャンネル)でしました。
よろしければご覧ください。


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2022年の本 [本の感想系]

「2022年もたくさんの本を読みました」とは全然言えないくらい少しの本しか読めませんでしたが、濃いぃ本が多かったです。おすすめ本の中から、ひそかな共通性がある本を紹介します。

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小松原織香
当事者は嘘をつく
筑摩書房
2022年1月 1800円+税
https://www.amazon.co.jp/dp/448084323X/
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森岡正博
人生相談を哲学する
生きのびるブックス
2022年2月 1800円+税
https://www.amazon.co.jp/dp/4910790004/
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広瀨一隆
誰も加害者を裁けない
京都・亀岡集団登校事故の遺族の10年
晃洋書房
2022年3月 1400円+税
https://www.amazon.co.jp/dp/B09W9QWTPF/
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藤田一照・阿純章・前田壽雄
忍辱 真実を受け入れる
みちしるべ 六波羅蜜シリーズ第3巻
仏教伝道教会
2022年6月 200円+税
http://bdksales.shop24.makeshop.jp/shopdetail/000000000189/
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塚原久美
日本の中絶
ちくま新書1677
2022年8月 900円+税
https://www.amazon.co.jp/dp/4480074996/
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2022年ナンバーワンは小松原さんです。
年明け早々に決定。
これはもう仕方がないと思います。
読めたら読んでください。

衝撃度では塚原さんのもものすごいです。
日本中が啓蒙され尽くしてほしい。
読めたら読んでください。

あとまでじわじわ引くのが広瀨さん。
帯広の書店にもずっと置いてあって嬉しかった。
読めたら読んでください。

森岡さんは「なんかすごいなこの本ww」という感じです。
それでいてしっかり哲学。ありがとうございます。

前田くんも何も言わずに送ってくれるのですごく嬉しい。
共著3人の中でいちばん真面目でしっかりしてると思いました。
ありがとうございます。

2022年も良い本をありがとうございました。
わたしも頑張って生きていきます。





以下、ほぼ『りゅうこく』掲載のままです。
Amazon用に変更したものもあります。
なんまんだぶ。

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当事者は嘘をつく

当事者は嘘をつく

  • 作者: 小松原織香
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2022/03/25
  • メディア: Kindle版


 今回もっともおすすめの1冊。ただし冒頭部分の告白には面食らうかも知れない。

 著者は『性暴力と修復的司法 対話の先にあるもの』(成文堂)で第10回西尾学術賞を受賞した若き研究者である。今作では自らが性被害(性犯罪ではない)のサバイバーであると認識している旨を述べつつ、読者に問いかけ、突きつけ、寄り添い続けながら、当事者である自分を軸に論考を進める。

 筆致が柔らく、優れた小説のように読みやすい。少しずつ謎が解かれていくミステリーかロードムービーのように進む文章は、最後には自分を棚上げにしない希有な研究者の誕生を当事者の目線で追体験させてくれる。それでいてなおかつ超弩級に重量級の内容には、ただただ圧倒される。

 ちなみに「修復的司法」というのは、犯罪の被害者がすべてを調整した環境下で自分の意思から加害者と会話をすることを選び、それを通して何かを得ようとしていく方法のことである。(日本では定義に用いる言葉や概念に多少の「ゆらぎ」のようなものはあるようだが、「英辞郎」というサイトでは「犯罪の加害者、被害者、地域社会が話し合うことで、関係者の肉体的・精神的・経済的な損失の修復を図る手法。」と説明されている。)

 著者は研究者や第三者による当事者の類型化を嫌う。当事者は「そのこと」だけの影響を受け続ける悲しい犠牲者ではなく、至極当然なことながら、それ以外のことも味わって生きている。人にはいろいろな側面があるし、本書が示すように変化し続ける。「嘘をつく」という衝撃的な表現には、当事者の変化や多様なあり方が含まれているのかもしれない。

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人生相談を哲学する

人生相談を哲学する

  • 作者: 森岡正博
  • 出版社/メーカー: 生きのびるブックス
  • 発売日: 2022/02/18
  • メディア: 単行本


 著者が回答者だった朝日新聞の人生相談をそのまままとめたもの、ではなく、自分が回答した人生相談をもう一度読み直し、そこからたぐいまれな哲学を開始したもの。

 人生相談の回答はネットのニュースなどで拡散されることがある。質問者の人生だけではなく読者の人生の一部も解決しかねない見事な回答はもちろん、質問者が無意識のうちに持っている偏見が暴かれ、別方向に解決されていくような興味深い回答もある。

 本書で紹介される人生相談はそれらとちょっと違う。紙上の人生相談の質問と回答が紹介されたあとで、著者が「もっとこんなふうに考えてこんなふうに回答すべきだったのに」と反省し、あらためて、より詳細な哲学的回答を述べる。この深く新しい回答は本当に質問者の真意を汲んだものなのか、著者が深読みしすぎているだけなのか、それはわからないが、たぶん後者であり、哲学的で唯一無二な回答の過程は著者の哲学の歩みを前進させているようだ。

 真剣に考え始めると答えが容易には導き出せなくなるような物事もある。そんな中、限られた字数でそれでも回答を提示する人生相談は偉大であるし、人生相談からも哲学はこんなに可能なのである。

 著者は、自身の考察が実存的に深められたことをよろこび、質問者に最大の謝辞を送る。哲学は丁寧かつ律儀な営みなのである。

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誰も加害者を裁けない―京都・亀岡集団登校事故の遺族の10年―

誰も加害者を裁けない―京都・亀岡集団登校事故の遺族の10年―

  • 作者: 広瀬一隆
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 2022/03/30
  • メディア: 単行本


 2012年4月に京都・亀岡で起こった「無免許の少年の運転する車が集団登校中の児童らに突っ込み、3人が死亡、7人が重軽傷を負う事故」を新聞記者である著者が発生直後から取材し、被害者の家族に10年間、密着したリポート。

 わたしたちは事故や事件の「遺族」と聞くと「悲しみにくれる存在」を思い浮かべる。しかし均質的な「遺族」が存在するわけではなく、誰かが突然に遺族になるので、当然、さまざまな遺族がいることになる。また、遺族は四六時中「遺族」だが、当然ながら遺族ではない側面をも生きている。

 加害者も同様に決して均質な存在ではない。更正を助ける身近な人がいる場合もいない場合もある。そして被害者も遺族も加害者も、一人一人生変化していく。それはおそらく事件が発端となった変化である。遺された家族は遺された家族で生きていく。

 遺族の1人は言う。自分は加害者を許さないが、他の加害者の更正は見守り手助けしたい。同様に加害者にも更正を見守り手助けする人がいるべきだ。だがわたしは彼を憎み続ける。加害者への罰則は不十分であると認識しているが、だからといって自分が加害者を裁いて危害を加えるのは、自分が加害者になるということで、それは亡くなった家族が最も望まないことである。

 10年経っても、何も終わるわけではない。本を1冊読んだだけなのに、まるで10年苦しんでいるかのような錯覚に陥る。丁寧に寄り添って、遺族の心の内側をこんなに感じさせてくれる本はないと思う。

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藤田一照・阿純章・前田壽雄
忍辱 真実を受け入れる
みちしるべ 六波羅蜜シリーズ第3巻
仏教伝道教会
2022年6月 200円+税
http://bdksales.shop24.makeshop.jp/shopdetail/000000000189/

 八聖道(正見・正思惟・正語・正業・正命・正精進・正念・正定)とならぶ仏教の大切な実践である六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)の一つをとりあげ、関連したテーマでエッセイが綴られるシリーズ第3巻。今回の主題は「忍辱」・たえしのぶこと。著者は曹洞宗から藤田一照師、天台宗から阿純章師、そして浄土真宗本願寺派から前田壽雄師。前田師は龍大OBで、わたしと大学院の同期・同ゼミである。

 各エッセイのタイトルに掲げられた、仏教語やそうでない短い言葉について、三者三様に、宗派の特徴的な味わいを述べたり仏教全般に通じる内容を述べたりしながら共通テーマ「忍辱」を考え味わう。読物として楽しく読めるものもあれば、知的な教訓を得てうならされたり、大切な「お説教」をいただくように読めたりする。仏教の奥深さと射程の広さを思う。

 発行の仏教伝道教会から、おそらく全国のお寺に1冊ずつ発送されていると思う。僧侶の多くにはときおり「お説教」をする役目がありがたくも課されることがある。そのときに大いに参考に出来る本でもある。

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日本の中絶 (ちくま新書 1677)

日本の中絶 (ちくま新書 1677)

  • 作者: 塚原 久美
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2022/08/08
  • メディア: 新書


 『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ: フェミニスト倫理の視点から』(勁草書房)という、少し専門的な書籍の著者による、今回は新書ということもあり、一般向けで比較的平易な内容の、日本の中絶に関する諸問題の入門書。

 自身の経験などをもとに、20年以上にわたり中絶について研究している著者は、日本の中絶に、過度なスティグマ化(負の烙印)や、商業主義と結びついた「水子供養」など多くの問題点があると指摘する。

 帯に大きく「1年に14万件。」とあるのは2020年における日本の中絶件数である。最も多かった1950年代から60年代初頭までの9年間では、届け出のあったものだけで1000万件だったそうである。

 このような膨大な数字も提示しつつ、著者がこの本で問題にしたいのは、中絶件数の多さや中絶の「罪深さ」という方向のものではなく、むしろ逆に、日本の性教育や中絶の特殊性、とりわけ女性を幾重にも取り囲んでいる差別的な状況と、安全な中絶へのアクセスのしづらさ、諸外国の標準的な中絶に関する情報が日本国内では著しく少ないこと、などについてである。

 たとえば、世界中で医師の処方が必ずしも必要ではない状態で使われている安全な経口中絶薬が、ごく最近になり、日本でも認可されつつある。しかし日本の公式なサイトには「安全ではない」という古い情報が掲載されるなどミスリードな状況が続いている。その誤情報と現在の法律にのっとって、どうやら、薬の使用には医師の処方と入院が必須条件となり、費用も保険適用外の自由診療扱いで手術と同額程度の10万円前後と、先進諸外国(700円程度)の百倍超になる見込みであるらしい。これは本書でもそのような危惧が指摘されていて、出版後には実際、著者のサイトからもリンクして紹介している情報にもある。(「日本ではなぜ経口中絶薬に配偶者の同意が必要なのか」BBC 2022年9月1日。これが日本ではなく、あくまで外国の新聞のサイトで指摘されている点に注意が必要なのではないだろうか。)

 外国のやり方が必ず善であるということはないはずだが、それでも日本で行われている中絶の方法と、中絶を「厳罰」化する考え方(村中直人『〈叱る依存〉がとまらない』でも指摘されている)、女性の身体に関する決定権の所在など、日本の現時点でのやり方は、かなりちょっとおかしい。

 著者の前著や本書を読むまで知らないで過ごしていた中絶の事実があまりに多すぎる。啓蒙されるというより、今まで騙されていたのではないか?という感覚のほうが正直強い。大変な本である。少しずつでも良いから変えて行かなければならない。

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松崎智海『だれでもわかる ゆる仏教入門』(『ゆる仏教』) [本の感想系]

だれでもわかる ゆる仏教入門

だれでもわかる ゆる仏教入門

  • 作者: 松﨑智海
  • 出版社/メーカー: ナツメ社
  • 発売日: 2021/01/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

https://www.natsume.co.jp/books/14042
ナツメ社

松崎智海さんの『ゆる仏教』、うちの母の受け&評価が非常に高い。つまり、やり過ぎな感じのネットスラングみたいなのはうまく全スルーされて、伝えたいところだけきちんと伝わっているみたい。いろんな意味ですごいな。

なんまんだぶ。

わたしは、……スラング(とまでは言えないかもだけど現在しか通じなさそうなネット用語)がそこそこ頻出するのに衝撃を受けつつ、同時に内容のしっかりさ加減にも驚いた(失礼な)。これは『ポケットが虹でいっぱい』の後に『TECHNODON』が来たような感じと言えばうまく伝わるだろうか。と古くて局地的な比喩を用いる。

とにかく良いです。

中でも、読了した人と話すとわたしも含めて皆一様に「各宗派の説明が特に良い!」で一致します。それぞれの宗派の方と松崎さんとの間に信頼関係が築かれているのと聞き方がうまいのと、よくやってしまいがちな「とは言ってもやっぱりうちの宗派サイコー!」くささが皆無なのがすごい。語ってくださる方々もカチッと模範解答的な宗派紹介ではなく自分の今いる場所から見える景色を語ってくれているからホントにわかりやすい。それぞれすごい。仏教サイコー!

……と言って終わりたいのだけど、あと1つだけ。というのは、松崎さんの語る真宗理解がオーソドックスな理解と少し違うのが気になった(そこか!)。しかし、変わらぬ救いの理解は変わるから、このまま好き勝手を貫いて……というか真宗に特化した趣味や興味やベクトルのままでひたすら邁進、どんどんいっちゃって欲しい。

お金を払って買ってまで読む価値あるかと問われたら、あります!と答えます。というかこの値段は安いと思います。本の外観がゆるっとして可愛いのでだまされそうになりますが、かなり少なく見積もっても100円増し以上の価値はあると思います。

ガチ仏教。

なんまんだぶ。


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『漫画・高木顕明』 [本の感想系]


漫画・高木顕明: 国家と差別に抗った僧侶 (響流選書)

漫画・高木顕明: 国家と差別に抗った僧侶 (響流選書)

  • 作者: 山口 淨華
  • 出版社/メーカー: 響流書房
  • 発売日: 2021/01/08
  • メディア: Kindle版


「あっ。お東で僧籍剥奪されて、その後、名誉回復された人だ。それ以外よく知らないんだ。どんな人だったの?」

……みたいな軽~い気持ちで読み始めて、ものすごい衝撃を受けた。ねえ。無知というのは大変申し訳ないことだ。高木顕明だけじゃないし。マンガってやっぱりすごい。響流書房さん、ありがとうございます。

なんまんだぶ。なんまんだぶ。
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瓜生崇『なぜ人はカルトに惹かれるのか』法藏館 [本の感想系]

なぜ人はカルトに惹かれるのか  脱会支援の現場から

なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から

  • 作者: 瓜生 崇
  • 出版社/メーカー: 法藏館
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

「カルトという問題を考えるときに最も大事なのは、自分が「正しい」と思った道を貫き通すことではなく、立ち止まって考え、しっかりとブレることのできる勇気を持つということである。」p.114

 よくある(?)カルト脱会経験談や脱会支援本とは一線を画している。
 第一章では、カルト的な面があるのではないかという疑いを持たれることもある「親鸞会」という新宗教に、著者が大学入学のころに勧誘され、入会し、活発に活動し、十年以上を経てやがて脱会するという、壮大な半生記が綴られている。著者自身の経験が赤裸々に、また心の奥底をえぐるように、痛いほどに踏み込んで書かれている。そしてこれが次章以降の普遍的な課題を解く手がかりになる。
 第二章では、無意識のうちに「自分たちは正しくカルトは正しくない」という前提に立ってこの本を読んでいる読者に、その「正しさ」とは何かを問いかけ、その「正しさ」が読者と彼らに何を要求しどう振る舞わせるか、共通項を挙げることで境界の曖昧さを指摘し、その「正しさ」を動揺させる。
 わたしたちは本当に「正しい」のか? 「なぜ人はカルトに惹かれるのか」?。
 広く深い思索から導き出される一つの答えは「正しさ」への依存である。誰もが依拠するその人の「正しさ」こそがすべてを困難にしていくのだ。
 第三章では、カルト等からの脱会支援に携わる著者の立場から、脱会支援は必ずしも「脱会」が最優先ではなく、その人への「支援」が最優先であることが明らかにされていく。
 その人がカルトに入ったのは、弱いからだとか、騙されたからだとか、わたしたちはそう考えがちだが、実はその人の自由意志と判断とによる。であるならば、脱会も、当然のことながら、その人の自由意志と判断とによらなければうまくいかないのである。こちらの正しさを前提とした説得や強制的な実力行使ではなく、相手の言葉にこちらが反応し、時にはブレるような、人と人としての信頼関係が支援の前提とならなければならない。
 『仏説阿弥陀経』で、釈尊は舎利弗一人に語りかける。しかし周囲の者や読者はそれを南無阿弥陀仏に包まれてある自分への語りかけとして聞く。著者は已今当(過去・現在・未来)の「脱会」経験者一人に語りかけるが、周囲の者や読者はこれを「正しさ」に依存して日々を生きる自分自身への語りかけとして読む。
 とはいえ、著者は釈尊のような指導者ではなく、あくまで伴走者である。最後は力強いエールで締める。

「カルトを経験してやめたというのは、私は誰がなんと言おうと素晴らしい経験だと思っているのだ。どれだけ後悔に沈んで、どれだけ罪悪感に苦しみ、どれだけ教祖を憎むとも、その歩みが血となり肉となり人生を輝かせるときがきっとくる。それまで共に歩んでいこう。」p.201

※ 瓜生さん、哲学者の森岡正博さんとインスタライブで対談しました。お二人とも法藏館から著書を出していることから実現した、宗教者と哲学者の56分に及ぶガチンコ勝負! 刮目して見よ!

【インスタライブ対談】(他サイトが開きます)
 
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瓜生崇『なぜ人はカルトに惹かれるのか』法藏館 [本の感想系]

友だち?知り合い?が本を出しました。

瓜生崇
『なぜ人はカルトに惹かれるのか
 脱会支援の現場から』
法藏館
2020年5月10日
1600円+税

なぜ人はカルトに惹かれるのか  脱会支援の現場から

なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から

  • 作者: 瓜生 崇
  • 出版社/メーカー: 法蔵館
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

「これで、迷わず生きていきると思った」
自らも入信脱会を経験した著者が、アレフ(オウム真理教)脱会支援を通して気づいた、正しさ依存症としてのカルト。
脱会とは、迷いながら生きていく勇気を持つことである。
(帯より)

まだ読了出来ていませんが、数ページ読んだだけで早くも名著の予感です。

著者は、大げさな言い方ではなく、現在の浄土真宗全体の活動の一部を確実に開始し、また支える活動をしてくれています。大きなところでは全国の浄土真宗のご法話の日程が登録・検索できるようになったのも、浄土真宗の宗派を超えたご法話の会・合同布教大会が開始されたのも、また、いろいろなお寺や団体で、カルトの問題や、カルトに限らない教義や教学や実践の研修会の幅や深度が増したのも、すべて彼の尽力があったからこそであると言えます。

その彼の、宗教的な興味や不安など原点と思える部分から半生の記録のように綴られています。個人的な体験とそのときの思いを赤裸々に具体的に語ることが、普遍的な課題を解く手がかりにつながっていく。

前著『さよなら親鸞会』(サンガ伝道叢書)を二回りも三回りも大きくした、ルポ的な本。

……なのだと思います。これからしっかり読みますが、早くも名著の予感です。(大事なことなので二度言いました。)

なお、発売元の法藏館さまから直接買うと、2020年5月末まで、送料・代引き手数料が無料です。こちらです。
http://www.hozokanshop.com/Default.aspx?ISBN=978-4-8318-8779-5

では、よろしくお願いいたします。

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ファクトフルネス [本の感想系]


FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本

 以前、とある会話のなかで「日本では犯罪はどんどん減っている」という単なる事実を言ったところ、「お前は何を根拠にそんなことを言うのか!!」と怒られたことがある。わたしは最新のデータと分析から日本の犯罪の特徴を教えてくれる新書をもとにしてそう言ったのだが。
 その人のように、マスコミが用いる「相次いでいる」や「あとをたたない」などの表現を受けて、漠然と「犯罪は増えている」とイメージしている人は結構たくさんいる。(この表現も微妙。)そう、いわゆる「常識」や「体感」が事実から乖離していることは、そんなにまれなことではないのである。
 ……と、正しいデータや情報を武器に「正しく」戦っているつもりでつねづね偉そうにしているわたしだが、実は自分の「常識」や「体感」が事実から乖離していることをこの本によって思い知らされた。というのは、この本に紹介される最新の時事問題「10の基本的な三択問題」のわたしの正答率は2割以下だったからだ。(「ファクトフルネス」「チンパンジークイズ」でネットを検索)
 熟考して解く(20%)よりも考えずに解いた方が正答率が高い(三択問題の正答率は33%)ということは、わたしがいかに「間違った常識」で考えているかを示している。帯にもあるように、これは端的に言えば常識が古いのだ。仕方がないが、恥ずかしい。
 しかし著者には、他者の間違いを指摘して悦に入るとか、常識の変化にいちはやく対応して優位性を示すとか、そういう気持ちはまったくない。著者は、世界は昔より悪くなっているという悲観的な思い込みを排し、実は少しずつ、しかし着実に、良い方向に進んでいるという事実を伝えることをのみ望んでいる。
 浄土真宗的に言えば、この世界をお浄土に変え為していくことは難しいし、ほぼ不可能かもしれない。しかし現生正定聚という利益をいただいている者の中には、差別その他の抑圧という構造的暴力などに立ち向かう努力を開始することのできる者もいるだろう。少しずつ、しかし着実に良くなっていく世界を、さらに良くしていくことが出来れば、そんなに良いことはない。
 悲観から楽観へ。わたしたちの常識を、大変に明るい方向に変えてゆく。そういう願いをもった本である。データとの付き合い方にも明るくなれて、おすすめである。
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加藤泰憲『漫画 ブッダから親鸞へ』加藤泰憲作品集 響流書房 [本の感想系]

加藤泰憲
『漫画 ブッダから親鸞へ』
加藤泰憲作品集
2019年3月10日
響流書房 250円

漫画ブッダから親鸞へ: 加藤泰憲作品集 (響流選書)

漫画ブッダから親鸞へ: 加藤泰憲作品集 (響流選書)

  • 出版社/メーカー: 響流書房
  • 発売日: 2019/03/19
  • メディア: Kindle版

この電子書籍のマンガ、発売日あたりに購入して、なかなかダウンロード出来なくて、出来ても読めなくて、……今やっと読めました。

仏飛(ぶっと)びました。

昔、浄土真宗本願寺派のお坊さんをされている方が、その立場から仏教のマンガを描いて、商業誌や、お寺関係の人が編集出版するミニコミ誌みたいなのに定期的に発表なさっていたんだそうです。それをご家族の方がまとめて、とある機会に配布。それが回り回ってこのたび電子書籍化された。

仏教、特に浄土真宗的にはかなり有名な人の有名エピソード、……だけじゃなく、釈尊その人の話が、浄土真宗ではあまり触れられずにすごしている『ダンマパダ』などから引用紹介されていたり、親鸞聖人が悩んだり苦しんだりされていたときに、世界史的には大体こんなことが起こって、こんなふうに混乱していたんだ、そういう時期に日本ではまさに親鸞さまが法然聖人に出遇われて、阿弥陀さまの救いの教えに出遇われて……! という話が紹介されていたりします。
 
デジタル処理がまったくない時代、トーンも恐らく高価だったからか、あまり使わずに細密な背景が描かれている場面があったり、なんかものすごいクオリティで、でも独特の、今はちょっと古くさく感じられるような絵で語られていく、仏典の有名エピソード多数、ならびにあまり知られていないかも知れないその他のエピソード。とにかく全編の全部が全部、仏教の話。

変わったマンガ。すごいマンガ。妙好人も出て来ます。
仏教が好きな人、興味がある方にはお勧めです。

なんまんだぶ。
 
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新たなレビュー。ありがとうございます。 [本の感想系]

自著
(石田智秀
『浄土真宗の信心がこんなにわかりやすいわけがない』
 響流書房)
に新たにレビューがついてました。

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R25OZZ3LSZL56B/ref=cm_cr_othr_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=B018IZ7F4M

ありがとうございます。
大変ありがたい指摘です。
改善点が具体的に見えてきます。
なんまんだぶ。
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