完全に違法。

腎臓売買容疑で医師逮捕へ　養子縁組で親族間移植装う
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011062201001247.html

　腎不全を患った東京都内の医師（５５）が元暴力団組員と虚偽の養子縁組をして、親族間の生体腎移植を装い、１千万円を支払って腎臓の提供を受けようとしたとして、警視庁組織犯罪対策４課は２２日、臓器移植法違反（臓器売買の禁止）などの疑いで、医師と仲介役の組員（５０）ら５人の逮捕状を請求した。同日中にも逮捕する。

　移植をめぐる国内の臓器売買事件としては、２００６年の宇和島徳洲会病院（愛媛県）の例があるが、医師と暴力団の関与の疑いが明らかになったのは初めて。

　移植医療への信頼を根幹から揺るがす事態に発展するのは必至だ。

2011/06/23 11:35 【共同通信】

以前からずっと指摘のあったものがやっとオモテに出てきただけだと思う。
タイミング的に何か必然性があるのだろうか。それとも、もう隠せないからか。


5年前か、10年前か。

ある医師がある論文である「家族」について、生体間での臓器移植の前に、臓器提供を受ける側の病室には見舞客がたくさん来る一方で、臓器提供する側の病室には見舞い客が極端に少ないのをフシギに思っていて（だって「家族」なのに、仲が悪いのか良いのか、健康な体を切ってまで提供する側をもっと大事に考えてお見舞いに行っても良いんじゃないかと思う）、‥‥手術の後、その「家族」が両方とも退院した後で、その家族について、同僚の医師と、「あの家族は、今思えば、ひょっとすると、お金が介在した上での「家族」だったのかもしれないね」と話し合ったという、衝撃的な話を紹介していた。そういうのは案外よくあることかもしれないね、的に。

そういうのを読んだことがある。

その論文は、ある掲示板で引用されてた。

氷山の一角。

一方で、このニュースに対して、これは暴力団がからんだから悪いんじゃないかとか、両者間で折り合いが付いてるんだからホントは悪いこととは言えないんじゃないかとか、そういう日記やコメントを見た。

（いまさら確認することでもないと思うのだけど確認した方がどうも良いような気がしてならないので確認すると、）

旧法も現行の臓器移植法も、臓器の売買や金銭授受を伴うあっせんを禁止している。
明確に法律違反。
だから法律の上からいえば完全に「悪いこと」。
「この事件の場合は暴力団がからんだから悪い」とは言えない。
「折り合いが付いてるから悪くない」とも言えない。
法律の運用上は、これは「だめ！」と言わなければならないところ。

まさに。

そこを決めたのが臓器移植法。

逆に、今回の事件は氷山の一角に過ぎず、たくさんたくさん行われているのだとしたら、現実によって法律を変えるべきかも知れませんね。わたしはあんまりよくないんじゃないかと思いますけど。でもこれも「なんとなく」の印象です。

ともかく、今後は、もしかしたら、

「折り合いが付いたら金銭授受あっても良いことにしよう」とか「金銭授受であっせんしても良いじゃないか」という意見が大勢をしめて、そこでコンセンサスが得られていくなら、法律は変わっていくかも知れません。「3年ごとに現状に合うように変えましょう」という旨が臓器移植法の末の方に書いてありますから。ぜったいに変わらない法律ではありません。

っていうか、去年の法改正だって、旧法からは信じられないほど変わりました。
「自己決定」が最大にして唯一の論拠だったのにひっくり返した。

そして、

アメリカなんかでも「なんで売買だめなの？」的な意見が少なくないわけだし。
臓器売買が現実に合法なクニもあるわけだし。

なので、

今後は日本も、
金銭授受を伴う臓器のやりとりが合法である方向に、
変わっていくのかもしれません。

‥‥ただ、現在は、
金銭授受が伴って折り合いが付いた上での生体間の臓器移植がもし現実にあったとしたら、それは現行法から言えば完全に違法です。「悪いこと」に分類されます。

もちろん、違法だから「絶対に悪い」、合法だから「絶対に良い」とは言えません。

相対的なものです。

その相対的なものの折り合いをつけるために、法律を作ったり改正したりするときの議論があるのだと思います。

この「よんななニュース」では末尾に

「移植医療への信頼を根幹から揺るがす事態に発展するのは必至だ。」

とあるけど、そうかなあ。っていうか、これは煽ってるんだよね、ニュース読者を。
マスコミたるもの、こんなふうに無責任に煽り文句で終わるんじゃなく、

「臓器移植法をもう一回根本から考え直さなきゃだめなんじゃない？」
「臓器売買はなぜ駄目なの？　二者間で折り合い付いてもなぜ駄目なの？」
「子どもの脳死についての考え方はホントに現行のやり方で良いの？」
「大原則だったはずの自己決定と、本人意思確認できぬ場合は移植オッケーとの関係は？」

等を考えていく機運に発展させるような書き方をすべきなんじゃないのかと、わたしは思う。せっかくこんなに大きな事件（氷山の一角という意味でも）が起こったのだから。

なお、グレーや黒に近い「何か」をやってしまった当事者の方がもしあったとしても、わたしには、その方を責めることはできません。わたしがこうやって言ってる内容や態度は、現実に臓器が不全になって生きるか死ぬかの状態になってる人にとっては単なる机上の空論でしょうから。

ただ、当事者じゃない机上の空論でしか考えられないことも、あります。

ではです。