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古処誠二『遮断』 [本の感想系]

 『遮断』【bk1】を読んでます。

昭和20年5月。
逃亡兵となった
19歳の青年は、
置き去りにされた
赤ん坊を探すため、
戦火の沖縄を
故郷の村へ向けて
北上する――。

 古処氏は『UNKNOWN』【bk1】というミステリで「メフィスト賞」を獲ってデビューした作家です。自衛隊が舞台で盗聴を暴くミステリ。人死にはなし。ミステリと言うと人が死ぬのがアタリマエのこのご時世にものすごく珍しい作風だと思いました。少し雲のかかった秋空のようなさわやかさ。その後も『未完成』【bk1】という続編を書いたりしてるけどわたしそれはまだ読んでない。買ってはある。
 『少年たちの密室』【bk1】というのも出ました(のち『フラグメント』【bk1】と改題したらしい)。こちらは現代の都会が舞台で、少年たちが暗いところに閉じこめられるミステリ。謎解きが重要なのではなくココロのカットウとか心理描写がメインな印象でした。

 そして2002年4月に『ルール』【bk1】が出る。
 おまえパープルレインからアランドザワールドインナデイのプリンスかよ! というくらい作風が変わる。
 いや、一貫してココロの中を書いていると考えれば、作風は変わってないのかも知れない。ココロがコロコロ動きやすい若者が主人公という点も共通項ではある。
 でも舞台設定が変わりすぎ。『UNKNOWN』も『密室』も、とりあえず現代が舞台。でも『ルール』は60年前が舞台。アメリカと戦争している頃の、日本の軍隊での出来事が描かれてます。

 その後、古処氏がどういうふうに書いてるのか追いかけてなくて全然知らなかったんだけど、こないだ12月に『遮断』が出てたのを知りました。
 テーマ以外の内容をよく覚えてるわけじゃないんだけど『ルール』はとても良かったのです。そして『遮断』の帯には上に引用したようなことが書いてある。なので買ってみました。

 その後ネットで調べたら、『遮断』が表紙真っ黒なのに対し真っ白な表紙で『接近』【bk1】というのが出てるのを知りました。これも戦争の頃を書いたものらしい。『7月7日』【bk1】『分岐点』【bk1】という、似たようなテーマのもどんどん出されていたようです。ちなみに『ルール』の表紙は銀色。

 で、いまは『接近』を注文しつつ『遮断』を読んでいます。これは老人ホームにいるお年寄りが主人公で、その人が19歳のころの話です。

 古処氏は1970年生まれなのでもちろん戦争の頃の記憶を持ってないはずです。だけどかなり良い感じで書けてそうな気がします。奥泉光が『グランド・ミステリー』【bk1】や『浪漫的な行軍の記録』【bk1】を出してる、それとはやっぱり違うけど、なんとなく似たようなところで困難な作業をしてくれてる気がする。

 『遮断』、いまのところハードボイルドみたいな感じがあります。でも「固ゆで」と言うより、これは「岩」(違和?)か「鋳鉄」か何か、ものすごく硬い印象です。決して茹ですぎたから硬くなったもんではないと思う。鉛色の空というか、「青空!」と言われてもすべて闇の下で起こった出来事のような印象です。

 昔ジオシティにサイトがあったんだけどその後たたまれました。『UNKNOWN』だけだった頃に長い長いメールを出したらちゃんと読んで返事をくれました。とても良い方です(なんか変な言い方)。

 ともかく重いので間に『品川猿』か『文芸漫談』か『外伝』、そのへんを入れて読んでいこうと思う。いっそ『ウィトゲンシュタイン哲学宗教日記』か。


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