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『YASUKUNI 靖国神社』を見ました。 [政教分離]

 こんにちは。

 (以下5日の日記です。諸般の事情でアップは今日になりました。)

 本日、2008年9月5日、映画『YASUKUNI 靖国神社』を見ました。その感想を書きます。以下ネタバレになると思います。ご了承ください。

■感想
:あんまり面白くなかったです。
:監督は映画を撮る才能あんまりないのかも?と思いました。

 まず、ルポ映画としては駄作・超三流だと思いました。

 しかし後半の、「日本刀」にこだわって歴史的な記録フィルムをつないでるところは見られて良かったと思う。「ばんざーい」のところとかすごく綺麗だった。マスゲームを意識しないでやるマスゲームなのですね、万歳って。

 とは言っても、この「歴史的な記録フィルムをつなぐ」というのは、なにも「靖国」を冠した映画でやらなくても良かったんじゃないかなあ。映画前半の「靖国の現在」との接点がわたしには不明瞭なまま終わってしまったよ。

■気になったところ

◇まず、カメラが酷すぎます。

1.手ぶれ
 『ブレアウィッチ』みたいに手ぶれしまくりで、見始めて10分くらいで激烈に気分が悪くなりました。揺れないシーンもあるけど概ね揺れまくりなので全編にわたって吐き気との戦いを余儀なくされました。
 固定対象を固定カメラで撮るべきなのに手持ちで撮って揺れて気分悪くなるシーンも多数。「突撃ルポ」系だから仕方ないのか?と好意的に解釈すべきなのかもしれないんだけど、しかしわたしの耐えられる限度を超えていました。だからわたしには猛烈に悪い映画、ということになりました。

2.無計画ズーム?
 映画の醍醐味は、真っ暗な中で巨大なスクリーンに映写した映像を皆んなで共有して見ることに尽きます。なのに監督はそれをわかっていない気がしました。つまり画面の尺度が映画にまったく合っていない。17インチくらいのTV画面に映し出して一人で見ることしか考えてないのなら最初からDVDオンリーにすれば良い。公開してはいけない。
 また、顔のアップはときどき効果的にやるから良いのです。フツウに喋ってたはずの人の表情が突然揺れたのを見逃さずに「ばひゅっ」とアップするとか。だらだら全部アップで撮ってカメラぶらぶら揺らしたら吐き気二万倍にしかなりません。ひどいです。

3.雨粒ふいてよ!
 雨のシーン、カメラのレンズをわざと拭かなかったのかも知れないけれど、めちゃくちゃ見づらかったです。演出意図があったのだとしても結果的には大失敗だったと思います。例によってカメラ揺れまくるし。
 ‥‥雨粒シーンは黒歴史『Air』や『クラナド』の、桜吹雪や落葉や光が描き込まれすぎててうるさくなってしまった逆効果画面に、あらゆる意味でとてもよく似ている気がしました。あんまり良くない。

◇字幕も変でした。

 よく出てくる刀鍛冶のおじさんの滑舌がちょっと悪くて何言ってるのかわからんところがたくさんありました。聞き手の日本語も少し不明確。特に最後の方では聞き手とおじさん双方が聞き間違いし合って意思疎通ができてなかった。
 → そこをこそしっかり字幕付けて欲しかった。
 逆に、台湾の女性が喋るところ、その場にいた通訳の人がほぼ正確に?訳してくれてるのも撮って流してるのに、そこに翻訳字幕をかぶせていました。この演出はちょっと変だと思う。
 靖国神社の拝殿前かどこかで右翼の人が声明文みたいなのを読むシーン、あそこは字幕入れても良かったんじゃないかなあ。
 ‥‥ということで、字幕を付ける・付けないの意思統一が映画全体で全然なされていないっぽかったです。そういうのって、良い映画とは言えないと思う。

◇ご神体?
 靖国神社のご神体が「刀」ということになってたけど、あれって事実と違うんじゃないかな? たしか「タマ」か何かじゃなかったっけ? それか、目に見える物体的なモノは何もなくて「名簿」(とは言わないけどそういう感じの)がご神体の象徴みたいになってたんじゃなかったっけ? 非常に気になりました。(要調査:わたし)
 あと、刀の作り方を追うのなら工程をもっと丁寧に追わなきゃダメだと思います。あんな繋ぎ方じゃ刀がどうやって出来るのか全然わかんない。(雰囲気だけ描きたかったのかな? だったら『KillBill』の方が数段は良い。)

◇問題意識はどこにある?
 漫然とただ撮ってるだけのように思えました。監督の意識はどこにあるのだろう。全編を通して不明。どういう意図で映画を撮ったのか、その問題意識はどういうふうに画面に現れているのか、映画を撮る中でどう変化したのか・しなかったのか、‥‥それらがまったく伝わってこなかったです。
 いや、「変わろうとしていなかったから何も変わらなかった」というのはわかった。出発する前と後とでおなじ地点にいる、そんな映画が良いルポであるはずがない。
 「靖国神社の界隈でフィルムを回していたら偶然こんな面白い絵が撮れたんですよ!だからちょっとつなげて映画にしてみましたですよ!」みたいな、無計画・無策な映画に思えました。

■総合的には、

 映画としては×。ルポ映画としても×。

「映画」として見るのはお勧めしません。「ルポ映画」として見るのもお勧めしません。

 しかし映ってる中に面白いモノが多数あるので、辛抱してそこだけ集中して見れば良いと思います。今後誰かがそこだけ編集し直したりするかもしれない。ということで、

■いま思い出せる範囲でお勧めのシーンを具体的に挙げると、

1.いろんな人がいろんな作法で靖国神社に参拝しているシーン

1.8月15日の靖国神社がどんなふうなのか、それを教えてくれるシーン(わたしお坊さんなのでなかなか8月15日にお寺以外に行くのは難しいのです。だからとてもありがたかった。)

1.いろんな人がいろんなふうにそれぞれ本気で怒りまくるシーン(多数)

1.政教分離をわかってない、かつ「心の問題」と「行動の問題」の区別がついていない可哀想な小泉さんの会見シーン

1.実際の小泉さんの靖国神社参拝シーン(思い出した言葉:「ヒョギフ大統領の貴重な産卵シーン」)

1.日の丸がいっぱいの靖国神社に星条旗も掲げられているシーン。(ぼくああいう人は苦手です。)

1.アメリカ人に向かって「ヒロシマを永遠に忘れないぞ!」と言うシーン(その心って大事だと思う。でもあれに賛同して拍手するなら、うちらがああいうふうなことを言われるのに対しても拍手しなければならないんだよね。)

1.一生懸命に準備した記念式典のまさにクライマックスを反対派の暴挙によってぶちこわされそうになり、つい熱くなって首を圧迫して本気で落とそうとしたり、壊れたテープレコーダみたいに同じことを数十回も言って非難したりするシーン(あれは乱入した彼らの方が良くないと思ったなあ。あれじゃ言葉の暴力だよ。)

1.いろいろあって流血させられた人が、救急隊が来てくれてるのに「こんな怪我なんでもない、これで私を黙らせることが出来ると思ったら大間違いだ」的に言って救急車を帰してしまったばっかりにパトカーに乗せられてどっか連れてかれてしまうシーン(すごく勉強になりました。)

1.台湾の女性が怒りまくる直前の、日本人女性が「わたしの父の合祀を取り下げて」と言う、その言い分のシーン(とてもわかりやすい内容。)

1.本願寺派僧侶の菅原氏の語りのシーン(とてもわかりやすい。)

1.靖国神社境内地の深閑とした雰囲気の森を上空から撮ってるカメラがぐんぐん引いていくシーン

■そんな感じです。

ともかく非常に気分が悪くなりました。手ぶれは苦手です。いや、効果的な手ぶれは時々大好きです。しかし今回の『YASUKUNI』にそんな手ぶれは皆無でした、わたしが見る限りでは。

(蛇足。気分直しの意味も込めて、その後『スカイ・クロラ』を見ました(三度目)。とても落ち着きました。ある重要なセリフにやっと気づきました。見ながらときどき「やっぱ映画っていいな」って思ってました。)

ではです。
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