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「第三者の卵子提供」の記事について。 [生命学]

今日、2013年1月15日の北海道新聞の第24面に、
第三者の卵子提供を募る団体に関する、こんな記事がありました。
大変に興味深いので、ご紹介いたします。
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北海道新聞 2013年1月15日 第24面


「第三者卵子を仲介」
不妊治療医ら 無償提供者を募集

 不妊治療専門医や卵巣機能が低下する患者の関係者らでつくる民間団体「卵子提供登録支援団体」(略称・OD-NET、事務局・神戸市、岸本佐智子代表)は14日、早発閉経など卵子がない患者向けに第三者から健康な卵子の提供を募る「卵子バンク」を目指した事業を始めると発表した。

患者 早発閉経など20人登録

 匿名で無償のボランティアを登録し、医学的な条件が合った患者に提供する。登録の受け付けば15日に開始。海外で日本人女性らから卵子提供してもらう団体はあるが、国内での提供を目指す団体は初という。高齢での妊娠を希望する女性は対象外。提供者の安全性の確保や生まれる子どもの権利などについて議論を呼びそうだ。
 今回募集する提供者は、子どもがいる原則35歳未満の女性で、配偶者の同意が必要。検査費や交通費などの実費や、排卵誘発剤などによる副作用が起きた場合の医療費は愚者側が負担する。ボランティアが集まらなければ1年後をめどに有償化の検討もするとした。
 仙台市などの五つの民間不妊治療施設が卵子の採取や体外受精を担当。早発閉経や染色体異常のターナー症候群で卵子がないと診断された患者計20人を既に登録しており、当面、患者の新規募集はしない。
 同団体によると、早発閉経の女性は約100人に1人、ターナー症候群の女性は約2千人に1人でこれらのうち妊娠を希望する人は国内で数千人に上ると想定される。提供者の個人情報は患者に知らされることはないが、生まれた子どもが15歳以上になって希望すれば情報を開示する。
 卵子提供をめぐっては、厚生労働省の部会が2003年、ほかの方法で妊娠できない法律上の夫婦に限り、第三者提供の使用を認める報告書をまとめたが、その後の議論は進んでいない。
 患者支援に関わってきた岸本代表は記者会見で「法制化されていない現状の突破口を開きたい。倫理的に難しい問題があるが、当事者を含めた国民の声が反映された法整備をしてほしい」と話した。

若年層救済へ 「老化」は対象外
〈解説〉卵子提供を仲介する事業は、若年で妊娠できなくなった女性の救済が目的だ。当面は登録されている既存の患者20人に救済の対象を絞り、新規募集はしない。提供者が簡単には集まらないことも予想され、不妊に悩む多くの女性の期待にどれだけ応えられるかは未知数だ。
 卵子提供は国内では一般的でなく、海外で受けるケースが多い。相当数は高齢による卵子の老化で妊娠できなくなったケースとみられ、患者の登録には当然、こういった女性も希望するだろう。
 ただ運営団体はあくまでも染色体異常のターナー症候群などが原因で卵子ができない場合を想定。新規の登録が始まったとしても、卵子を持たない40歳未満の女性に限定する意向だ。
 また心理的な抵抗感や卵巣刺激など健康への悪影響が伴う可能性のある卵子提供に無報酬で応じる女性は多くはないと推測される。全国25の不妊クリニックや産婦人科で構成する日本生殖補助医療標準化機関(JISART)に参加する施設でも実績は全て身内や知人の提供で、完全な第三者からは皆無なのが現状だという。
 期待を抱く患者に失望を与えるだけの結果に終わる恐れもあり、卵子提供が適正に機能するかどうかを慎重に見守る必要がある。

一刻も早く法整備を
 日本生殖医学会倫理委員長の石原理・埼玉医大教授(産婦人科)の話
 卵子提供を必要とする人がいることは間違いなく、日本人が海外渡航している事実がある。卵子提供の是非とは切り離し、既に精子や卵子の提供で生まれた子どもの法的な地位を明確にするために、一刻も早い法整備をしてほしい。民間団体の枠組みで親子関係に関わることを進めて大丈夫なのか不安もある。

卵子提供による不妊治療
 第三者から健康な卵子をもらい受けて夫の精子と体外受精させ、受精卵を妻の子宮に移植する医療行為。国内で法律や指針などによる規制はなく、適切な実施に向けた法制化の動きがある。
 卵子提供者には、排卵誘発剤の投与で卵巣が腫れたり吐き気などを催したりする卵巣過剰刺激症候群の発症や採卵時の針による出血などのリスクがある。
 生まれた子どもが出自を知る権利を求めた場合の対応や、子どもが知らずに血縁者と結婚してしまう司能性など、第三者からの精子提供と同様の倫理的問題も多い。

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記事は以上です。

生命学・生命倫理学的な諸課題に対し、いろいろ手放しで「当局」的な立場からの主張を無批判にそのまま書く場合が決して少なくない気が個人的にはする道新が、こんなに地の文その他でいきなり問題点を指摘しまくっているのは、個人的にはちょっと珍しい気がします。臓器移植の報道も道新ではある時期から一部で大きく変わりましたし、その流れなのかなあ。

以下、Twitterで囀ったことやFacebookで書いたことから。

卵子提供や精子提供の話題やニュース、人工授精卵を第三者が出産する話題やニュースに接するたびに、養子縁組しないのはなぜなのかなあ? と思う。いわゆる「不妊治療」をどこで止めるのか? の判断も難しいわけだし。希望・欲求をかなえるだけが希望・欲求に沿うことではないのでは? と思う。

「理性ではない」ってことなのかなあ?とは思う。しかし感情や理性はせめぎ合うものだから、ある問題ではどっちかがどっちかに必ず勝つってもんでもない。先のtweetのようなことを言うと「おかしい!」と言われることが多いが、でも、どっちかだけを最高の善のように考えるのも変だと思う。

そして問題なのは卵子提供は女性の体を傷つけるってことです。…人工・体外授精を希望する女性の卵を摘出する時にお願いするスタイルだけでは終わらない話になるのでは?と思う。卵も凍結保存できるから「若いうちに摘出して」的なスタイルになったり? などなどいろいろ考えさせられる。

血のつながりってそんなに大事なのでしょうか。
自分の子って、なんでしょう。
精子も卵子も他人から提供された子が、どういう意味で「自分の子」なのでしょう。

子を為した人が離婚したりシングルマザ・ファザであったりして、再婚します。
再婚した相手は「自分の子じゃないから可愛くない」のでしょうか。

いろいろ考えさせられます。

ただ、「やりたいからやっちゃえ!」や「技術があるからGO!」
ではないことは、わたしには明白です。

自分の子じゃなくても、可愛くなくても、子どもは子どもとして保護され愛されるべきでしょう。理性ではそのようにわたしは思います。一方で、感情水準では、もちろん、自分と遺伝子的に関わりあるモノを最優先するように、社会的なスリコミがわたしにも行われていますが、それは相対的な関わりに過ぎないと思ったりもします。

子育てが理性と感情のせめぎあいであることは、外から見ていてよくわかりますが、しかしそれが、他人の精子や卵子で「自分の子」になる、それがよくわかりません。出産を自分で受け持って、それ以外を理性でカバ出来ると考えているのだから、もう少し理性を延長して、養子縁組でいい、ということにならないのが、ちょっと不思議です。

遺伝子的なつながりをもつ親子関係を否定しているわけではないですよ。

わたしの理性と感情のせめぎあいの中で、なんかえもいわれぬ「変なもの」を、人工・体外受精や、子宮を借りる話を聞くにつけ、思うことが少なくないのです。ある程度納得のいくモノもあるけれど、なんか変なものもたくさんある。そして、他人の精子と他人の卵子を他人の子宮で育ててもらって「自分の子」という人も、たしかアメリカにいますよね。以前大変に話題になった、体細胞由来ヒトクローン個体も、一体何がしたいのか、ちょっとわからない。クローンは遺伝子的なつながりはゼロです、自分だから。なぜ養子縁組をしないのか、よくわからない。

血のつながりが本能的な水準または社会的なすりこみの水準で重要なのはよくわかる。わからないのは、それを最重要視する考えを最高の善ででもあるかのように考える、ある種の空気感です。

きなくさい感じがするのは、人工・体外受精にはものすごいお金がかかることと、何回やってもできない場合はできないこと、どこで線を引くのかは個人に「あくまで」ゆだねられていること、です。こういうの、何かすごく変なニオイを感じます。

子は自分の所有物ではないから「自分の子」は存在しない。
一方で、遺伝子的なつながりのある個体は存在する。それは「自分の遺伝子を一部引き継いでいる子」ではあるがそれを「自分の子」と言うのかどうか。
一方で、養子縁組でつながった子を「自分の子」と言うのは許されないのか。結婚した相手が先に為していた子を新たに「自分の子」というのは許されないのか。どちらも許される、ってか「自分の子」って何。

卵子を凍結保存できるようになったので、いろいろどんどん変わっていくでしょうね。今こうやって「慎重論」みたいなことを言ってるわたしですが、次の瞬間には「ビバ!他者からの卵子提供!」くらい言うのだろうか。

以上です。ああ、長いですね。
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