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新出生前診断に関する記事について [生命学]

今日、2013年1月15日の北海道新聞の第10面に、
新出生前診断に関する、こんな記事がありました。
大変に興味深いので、ご紹介いたします。
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北海道新聞 2013年1月15日 第10面


「臨床研究始まる新出生前診断の課題は」
米国の専門医に聞く

ダウン症の最新の情報を
生命めぐる問い十分な議論必要
(写真)インタビューに答えるブライアン・スコトコー医師

 胎児にダウン症などの染色体異常があるかが、妊婦の血液を調べるだけで高精度に分かるという新出生前診断の臨床研究が近く始まる。検査が開発され、商業ベースで利用されている米国では、どんな課題が明らかになってきたのだろうか。遺伝医学が専門で、米マサチューセッツ総合病院のダウン症プログラム共同主任、ブライアン・スコトコー医師(33)に聞いた。

Q.新検査の受診者は。
「検査会社の方針で、現在は35歳以上で超音波検査の際に何らかの異常が疑われた場合など『ハイリスク』妊婦が対象とされている。だが、ハイリスク以外の妊婦にも希望者はおり、誰でも受けられるようになる司能性がある」

Q.ーダウン症について「陽性」の結果が出た妊婦からの相談は。
「受けている。私が何より重視しているのはダウン症に関する最新の正しい情報を知ってもらうこと。実際には、古い不十分な情報に基づいて(中絶などの)結論を出してしまう妊婦が多い」

Q.検査結果を伝える医師に求められることは。
「結果が陽性なら地元のダウン症団体を紹介すること。ダウン症の子の育ち方などを一番よく知っているのは家族だ」

Q.米産婦人科学会の新検査へのスタンスは。
「特定の見解は出ていない。実現したら素晴らしいと私が思うのは、検査会社が『陽性』の結果とセットでダウン症関連の情報を妊婦に渡すことだが、その動きはない」

Q.マサチューセッツ州には同症の情報提供に関する法律があるそうだが。
「出生前後に子どもがダウン症と分かった妊婦や母親に包括的な情報と支援を提供する法律で、2008年にできた連邦法に基づき最近成立した。ダウン症の最新情報を載せた冊子を関係する医師全員に配布し、妊婦らに渡してもらう。先輩の親たちに365日、電話で助言を求められるプログラムもある」

Q.出生前診断で陽性の結果が出た場合、何割くらいが中絶を選ぶのか。
「ごく一部の州の調査によれば約75%。ボストンのような都市では90%程度との実感がある」

Q.中絶する、しないの選択を分けるものは。
「それを明快に説明できる研究はないが、ダウン症の人や家族に会って実際の幸せな生活を知り『思っていたほど悪くない』と妊娠を継続するケースもある」

Q.新検査の普及で中絶が増加する懸念は。
「この検査は今後、通常の妊婦健診の一部になり、中絶は増えるだろう。妊娠10週程度で結果が出るため、周囲が妊娠に気付く前に個人の倫理観のみで決断されることになる。誕生後ではなく、出生前の診断が主流になっていくかもしれない」

Q.新検査の精度に疑問の声もあるが。
「これまでの研究はハイリスク妊婦を対象に行われており、妊婦全体で同じ精度があるのかは確認されていない。だが妊婦全体を対象とした研究は時間がかかるだろう」

Q.将来はさらに多くの病気が出生前診断で分かるようになるのでは。
「ダウン症は診断が簡単だから数多くの病気の最初になっただけ。生命はいつ始まり、価値のある生命とは何なのか。こうした終わりのない問いに社会の議論が必要だ」

Q.あなたがダウン症の妹さんに受けた影響は。
「妹は32歳で、実り多い生活をしている。私が今の仕事に就いたのも彼女がいたからで、大切なことを数多く学んだ」

新出生前診断
 妊婦の血液に混じる胎児のDNAを調べ、ダウン症など3種類の染色体異常を高精度に検出する検査。臨床研究は国立成育医療研究センター(東京)などが計画。道内では北大、札医大が参加する予定。日本産科婦人科学会は昨年12月に検査の在り方などについての指針案をまとめ、「対象を出産時満35歳以上の妊婦や染色体異常児の妊娠経験者らに限定する」「医療施設側は遺伝学的検査に精通した産婦人科医と小児科医の常勤が必要」などと要件を定めた。今月21日まで同学会ホームページで一般から意見を募集しており、3月の正式策定を目指している。

(新聞では記者の質問は「Q.」で表示されてはいません)
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アメリカの専門医って書いてあるから、ものすごい斜め方向から読んでしまいましたが、いきなり方向転換できました。わたしの考え方は、この専門医の方と似ています、というか、こういう考え方です。

こういう記事、もっと欲しい。
こういう話を聞いて、自分なりに考えたり行動したりするときに、昨年出た、

粥川準二
『バイオ化する社会』
青土社
2012年4月16日
2200円+税

という本や、あれやこれやが、参考に出来るのではないかと思います。
では失礼します。


バイオ化する社会 「核時代」の生命と身体

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  • 作者: 粥川準二
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2012/04/10
  • メディア: 単行本



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