モンゴルよ、ああモンゴルよ、モンゴルよ。 [本の感想系]
歴史研究の本なのに、最初の方は本当に血湧き肉躍る感じでわくわくします。設定や視点はすごく面白い。……面白いのですが、途中からものすごく詳しすぎるモンゴル史になって、「いやそこまで詳しく知らなくても良いんです先生……」と言いたくなります。しかし、本当にものすごいです。圧倒されます。
ものすごく多くの影響をこの世界はモンゴルから受けている。世界史からモンゴルを抜いて語るのは愚の骨頂。とくに今の世界に蔓延しているように見える各国における「わたしの国の今の政府はいろんな意味での〈しかるべき手続き〉を正当に経てまったく問題なく正統かつ無謬の存在としてイマココにあるんである」的な「歴史観」からいくと、各国の「歴史」的にはモンゴルはほぼなかったことになる。しかし、それは積み重なる知の集積のような捉え方で「歴史」を考えていくなら、まったくおかしなやりかたである。各国が都合良く編集する前の真の集合知を手に入れたくはないか!? わたしは手に入れたい! そして世界で共有したい!
……という旨の主張(取意)は、まったくその通りだと思いました。感動的です。
しかし途中から、モンゴル同様に「歴史から抹殺された帝国」的な文脈でアレが出てくるので、まあそれは一面から見ればまったく正しいけれど、でもそれは現在から過去を一方的に断罪するのとは違う見方からみてもちょっと受け容れられない面がバリバリあるんですが先生それは……という感じもありました。
はるか昔のモンゴル帝国でさえ先生が憤る今のような扱いを受けているんだから、ちょっと前、虚実ない交ぜにしつつハラワタ煮えくりかえってる人が今もたくさんいるもう一つの帝国の方を歴史的な帝国としてすんなり認めよう、表に出してやっていこう(取意)……というのはかなり無理があるとわたしは思います。
「歴史研究においては」ということでそれがもし認められたとしても、そこに「我が意を得たり」的に誤解・曲解してムチャクチャを言い出す人が一定数以上いるだろうことも容易に予測できます。だから、正直「なんだかなあ」と思いました。「よくある感じ」になって終わってしまった印象。
しかし、モンゴルがいかにすごかったか、どのように世界に影響を与えたのか、という研究は、本当にすごかったです。
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