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ファクトフルネス [本の感想系]


FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本

 以前、とある会話のなかで「日本では犯罪はどんどん減っている」という単なる事実を言ったところ、「お前は何を根拠にそんなことを言うのか!!」と怒られたことがある。わたしは最新のデータと分析から日本の犯罪の特徴を教えてくれる新書をもとにしてそう言ったのだが。
 その人のように、マスコミが用いる「相次いでいる」や「あとをたたない」などの表現を受けて、漠然と「犯罪は増えている」とイメージしている人は結構たくさんいる。(この表現も微妙。)そう、いわゆる「常識」や「体感」が事実から乖離していることは、そんなにまれなことではないのである。
 ……と、正しいデータや情報を武器に「正しく」戦っているつもりでつねづね偉そうにしているわたしだが、実は自分の「常識」や「体感」が事実から乖離していることをこの本によって思い知らされた。というのは、この本に紹介される最新の時事問題「10の基本的な三択問題」のわたしの正答率は2割以下だったからだ。(「ファクトフルネス」「チンパンジークイズ」でネットを検索)
 熟考して解く(20%)よりも考えずに解いた方が正答率が高い(三択問題の正答率は33%)ということは、わたしがいかに「間違った常識」で考えているかを示している。帯にもあるように、これは端的に言えば常識が古いのだ。仕方がないが、恥ずかしい。
 しかし著者には、他者の間違いを指摘して悦に入るとか、常識の変化にいちはやく対応して優位性を示すとか、そういう気持ちはまったくない。著者は、世界は昔より悪くなっているという悲観的な思い込みを排し、実は少しずつ、しかし着実に、良い方向に進んでいるという事実を伝えることをのみ望んでいる。
 浄土真宗的に言えば、この世界をお浄土に変え為していくことは難しいし、ほぼ不可能かもしれない。しかし現生正定聚という利益をいただいている者の中には、差別その他の抑圧という構造的暴力などに立ち向かう努力を開始することのできる者もいるだろう。少しずつ、しかし着実に良くなっていく世界を、さらに良くしていくことが出来れば、そんなに良いことはない。
 悲観から楽観へ。わたしたちの常識を、大変に明るい方向に変えてゆく。そういう願いをもった本である。データとの付き合い方にも明るくなれて、おすすめである。
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